かつては、北海道の定番みやげとして主役の座に就いていた「木彫り熊」。その存在感は次第に薄れていったが最近、じわじわとブームが再燃しているらしい。世代を超えて愛され続ける魅力とは? 今、注目される木彫り熊にズームイン!
木彫り熊の発祥って?
尾張徳川家がスイスから八雲に持ち込んだペザントアートが始まり
木彫り熊が誕生したのは、今から100年ほど前。尾張徳川家が開拓に尽力した八雲町で、徳川義親(よしちか)が農民たちに冬の副業として制作を奨励したことから始まった。スイスで出合ったペザントアート(農民美術)の熊をモデルに、北海道で第一号となる木彫り熊が作られた。
茂木多喜治氏が制作した「鮭背負い熊」。木彫り熊といえばサケをくわえた姿が有名だが、八雲ではサケを背負った姿の方がそれより古くから作られていた
スイスの熊をモデルに作った北海道第一号の木彫り熊。八雲町で開催した「第一回農村美術工芸品評会」に伊藤政雄氏が出品
八雲を拠点に活躍した柴崎重行氏による木彫り熊。手斧で割った面を重視する独自の彫り方「ハツリ彫り」で、這った熊を表現している
柴崎重行氏と根本勲氏が長万部で見つけた木の根っこを彫刻した「這い熊」。大胆にカットされた面で熊を表現している
木彫り熊の種類は?
サケをくわえているだけじゃない? 擬人化させたユーモラスな姿も人気
木彫り熊は、サケをくわえた姿が印象深いが、制作初期はサケをくわえていない姿が多かった。旭川に端を発するアイヌの木彫り熊もしかり。さまざまな評価を受けて造形表現に広がりが生まれ、毛彫り、面彫りなどの彫り方による種類や、吠え熊、這い熊、擬人化させた熊など、多様なスタイルがある。
サケをくわえた木彫り熊が北海道みやげの定番的存在となったのは、1950~60年代ごろ
ヒグマの荒々しい自然の姿をそのまま再現したものから擬人化させたかわいらしいものまで、その作風は実にさまざま
再注目されてるってホント?
引き金となったのはSNS、木彫り熊への関心が高まりつつある
インスタグラムでは数年前から「#木彫り熊」というハッシュタグが増え始め、イベントが開催されたり、インテリアとしておしゃれだと注目の的に。多様な作風を見せる木彫り熊の姿は、昭和の大きなブームを経て、現代を生きる人の心を癒やしてくれる存在になっている。
昭和初期に制作された擬人化作品「バットを振る熊」
おすすめのスポットってありますか?
熊彫り体験ができる工房や歴史を学べる資料館、熊専門店も
工房主・小熊秀雄さんによるハツリ彫りの木彫り熊。熊彫り体験がメインとなるが、作品も販売している。熊彫り体験1人3500円(材料費込み・2日前までに事前予約が必要)
道南・八雲町
熊友工房(ゆうゆうこうぼう)
最寄りIC:八雲ICより3.4km/車で約10分
予約制で熊彫り体験が楽しめる木彫り熊工房。モチーフとなるのは、八雲を代表する木彫り作家・柴崎重行氏のハツリ彫りの熊。所要約3時間で手のひらサイズのかわいい熊が作れるので、木彫り熊好きにはたまらない。
●場所/八雲町富士見町56 ●時間/10:00~17:00 ●休業日/月曜 ●駐車場/2台 ●TEL/090-8904-6433
各地で開催されている熊彫りワークショップも人気
今にも動き出しそうな迫力満点の熊から、擬人化させたユーモラスな熊などさまざまな木彫り熊がずらりと並び、見応えたっぷり
道南・八雲町
八雲町木彫り熊資料館
最寄りIC:八雲ICより2.6km/車で約10分
「北海道木彫り熊発祥の地、八雲」の歴史を紹介する資料館。館内には北海道第一号の木彫り熊と、そのモデルとなったスイスの木彫り熊をはじめ、八雲の作家たちが手がけた貴重な作品が多数展示。八雲だけでなく、旭川や白老など道内各地で作られた作品も並んでおり、木彫り熊の変遷をたどることができる。渡り廊下でつながる「八雲町郷土資料館」と合わせて見学すると、木彫り熊が生まれた背景をよりディープに学べるので、全て見終えた頃には、きっとあなたも木彫り熊ファンになるだろう。
●場所/八雲町末広町154 ●時間/9:00~16:30 ●休業日/月曜・祝日 ●駐車場/12台 ●TEL/0137-63-3131 ●入館料/無料
八雲町内外の木彫り熊など約300点が展示される国内唯一の資料館
古民家を改装した店内にはイートインスペースもあり、予約すれば軽食も食べられる
道央・壮瞥町
KIOSK EPERE(キオスク エペレ)
最寄りIC:伊達ICより11km/車で約20分
通称「熊好きおしみ」として親しまれている清水さんが営む「熊」の店。店内には厳選した木彫り熊や熊モチーフの雑貨が並び、自らデザインを手がけているオリジナルグッズも人気。ほっこり楽しい壮瞥の熊スポット。
●場所/壮瞥町滝之町283-51 ●時間/11:00~18:00 ●休業日/月・木曜(ほか不定休あり) ●駐車場/5台 ●TEL/なし
2024年にリニューアルし、ギャラリーもオープン。八雲町木彫り熊資料館とともに訪れたい注目の熊スポット
道南・八雲町
木彫り熊と本の店 kodamado(コダマド)
最寄りIC:八雲ICより2.5km/車で約5分
木彫り熊に惹かれて八雲に来てくれた人に、記念になるものを持ち帰っていただけるようにと開いたギャラリーショップ。道内や八雲の木彫り熊とグッズ、関連書籍の販売をしており、貴重な八雲の木彫り熊も鑑賞できる。
●場所/八雲町本町87 ふたばビル2階 ●時間/9:30~17:00、土・日曜・祝日13:00~16:00 ●休業日/不定休 ●駐車場/1台 ●TEL/0137-63-2917
有名コレクターの人っているの?
います。 レバンガ北海道の桜井良太GMです!
木彫り熊との出合いで北海道生活がより豊かに
北海道への移籍で出合った木彫り熊
僕にとっては運命の出合いでした!
木彫りの熊との出合いは、とあるセレクトショップにて、旭川で50年木彫りを続けている佐藤憲治さんの作品を見つけたことがきっかけです。ひと目見た時から、とりこになりました。2024年に木彫り熊が誕生100周年を迎えたことと、自分の引退が重なったことにも特別な縁を感じています。先日、八雲町でのイベントに参加しましたが、知れば知るほど惹かれています。皆さんもぜひ道内各地を訪れて、北海道の文化である木彫り熊の魅力を発見してみてください。
桜井 良太さん
レバンガ北海道GM。北海道で17年間プレーし、2024年に現役引退。636試合連続出場記録を保持
桜井 良太さん
レバンガ北海道GM。北海道で17年間プレーし、2024年に現役引退。636試合連続出場記録を保持
昔からフィギュアなどが好きだったそう。通ずるものがあるのかも
木彫り熊に本格的にのめり込むきっかけになった佐藤憲治さんの工房にて